子どもの病気のど
子どもに多い溶連菌感染症とは?治療期間や登園の目安を紹介
「子どもののどが真っ赤で熱が高い……」風邪かなと思うこのような症状は、もしかすると溶連菌感染症かもしれません。
溶連菌感染症は、冬だけでなく春から初夏にかけても流行がみられ、年間通して感染の可能性がある病気です。
「ただの風邪だろう」と放っておいたり治療が不十分だったりすると重症化のおそれだけでなく、長期の治療が必要となったり後遺症が残ったりする可能性もあります。
今回は子どもがかかりやすい溶連菌感染症について詳しく解説しましょう。目次
溶連菌感染症とは
溶連菌感染症は正しくは「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」といい、溶血性連鎖球菌という細菌が原因の病気です。
溶血性連鎖球菌には、A群、B群、C群、G群などがありますが、約90%がA群によるものです。
この菌がおもにのどに感染し、腫れや痛みを引き起こします。
感染経路
溶連菌感染症のおもな感染経路は、咳やくしゃみで飛び散った細菌を吸い込んで感染する「飛沫感染」と、患者のタオルや食器などを介して感染する「接触感染」です。
感染力が非常に強く、学校や幼稚園・保育園などの集団生活はもちろんのこと、子どもから看病する大人へ感染する可能性もあります。
溶連菌感染症の流行時期
溶連菌感染症の流行時期は、11月~4月といわれています。
この時期はインフルエンザや感染性胃腸炎などが流行る時期なので、症状だけではどの感染症にかかっているのか素人ではわかりません。
風邪のような症状がみられたら、早めに病院受診しましょう。
溶連菌に感染しやすい年齢
溶連菌感染症の感染は子どもに多く、5歳~15歳頃に多くみられる病気ですが、3才以下の乳幼児や成人も感染することはあります。
また溶連菌の症状がみられない「健康保菌者」である場合もあるため、実際は全年齢でかかりやすい感染症といえるでしょう。
ただ健康保菌者からの感染はまれと考えられています。
一度感染しても繰り返し感染することもあるため、かかったことがあるからといって油断は禁物です。
溶連菌感染症の症状
2~5日ほどの潜伏期を経た後の溶連菌の初期症状は、38~39℃以上の突然の発熱やのどの痛み(急性咽頭炎や扁桃炎)が中心です。
その他にも次のような症状がみられます。
- 頭痛
- 腹痛
- 嘔吐
- リンパ節の腫れ
- のどの腫れ
- 扁桃腺の白苔
- イチゴ舌
扁桃腺には白苔(はくたい)と呼ばれる、白い膿がみられることもあります。
その後、身体や手足に粟粒大の赤い発疹や、舌に赤いつぶつぶができる「いちご舌」があらわれる猩紅熱(しょうこうねつ)と呼ばれる症状があらわれることも少なくありません。
また溶連菌感染症は、一般的な風邪と異なり、咳や鼻水の症状は出にくいという特徴があります。
症状が落ち着くと、発疹の跡の皮がめくれて、剥がれ落ちていきます(落屑)。
溶連菌感染症の重症化リスク
溶連菌感染症は重症化すると、次のような皮膚疾患を起こす恐れがあります。
病名 症状 伝染性膿痂疹(のうかしん) 皮膚に細菌が感染することにより起こる病気で、とびひとも呼ばれます。かゆみによりかきこわした部位に細菌が感染し、飛び火するかのように症状が広がります。 丹毒 皮膚の真皮に細菌が感染し、皮膚が赤く腫れ痛む病気です。主に顔に多くみられ、重症化すると水ぶくれや内出血がみられます。 蜂窩織炎(ほうかしきえん) 皮膚の真皮から皮下脂肪にかけて、細菌が感染し起こる病気です。水虫による傷口から細菌が感染しやすいため、主に下肢に症状があらわれます。 他にも中耳炎や肺炎・副鼻腔炎・化膿性関節炎や骨髄炎・髄膜炎など、さまざまな疾患を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
溶連菌感染症の検査方法
まず年齢や発熱具合、のどの状態、身体や手足の発疹の具合などの症状を確認し、溶連菌感染症への感染の疑いがあれば検査がおこなわれます。
溶連菌感染症の検査方法は、綿棒を使ってのどの奥の粘膜から検体をぬぐい取り、迅速診断キットを使って検査する方法です。
5~10分ほどで結果が判明し、溶連菌感染症への感染が認められれば、治療を開始します。
溶連菌感染症の治療方法
検査の結果、溶連菌感染症に感染していたら、熱やのどの痛みをやわらげる薬とともに、抗生剤が処方されます。
抗生剤は約7~10日分処方され、医師の指示通りに最後まで飲みきることが重要です。
症状がおさまってきたからといって、抗生剤を途中で飲むのをやめてしまうと、再発したり重篤な合併症を引き起こしたりするおそれがあります。
溶連菌感染症の治療が不十分なときに起こるリスク
溶連菌感染症の治療が不十分だと、次のような合併症を引き起こすリスクが高まります。
溶連菌感染症の合併症
- リウマチ熱
- 急性糸球体腎炎
- 紫斑病
それでは1つずつみていきましょう。
リウマチ熱
溶連菌感染症にかかって約2週間後、高熱や関節痛を引き起こすことがあります。
膠原病のリウマチとは無関係な疾患です。
急性糸球体腎炎
急性糸球体腎炎は、溶連菌感染症にかかって約1~3週間後に発症する可能性のある病気です。次のような症状があらわれます。
- おしっこが濁る
- 血尿
- 腹痛
- 頭痛
- 足のむくみ
溶連菌による咽頭炎の1~5%で起こるとされています。
紫斑病
溶連菌感染症にかかって約1~2週間後、手足に出血斑が出たり、腫れたりすることがあります。
溶連菌感染症にかかったら?
溶連菌感染症にかかったら、安静に過ごします。のどの痛みが強いため、刺激の強い食事は避けた方がよいでしょう。
ゼリーやヨーグルト、プリン、冷ましたスープやうどんなど、のどごしがよく消化のよい食事がおすすめです。
食事をとることが難しいようでも、水分だけはしっかり補給することを忘れないようにしましょう。熱が下がれば、入浴しても構いません。
また、感染の拡大を防ぐため、外出の際はマスクをしましょう。
登校・登園はいつからできる?
溶連菌感染症は、法律で定められている出席停止期間はありません。
また溶連菌感染症は、抗生剤を服用すれば24時間以内に周囲への感染の可能性が低くなる病気です。
発熱は発症から3~5日後には下がり、他の症状も1週間をめどにおさまります。
厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」では抗生剤を服用させたあと24時間以上経っていて、症状がおさまっているようなら、登校や登園しても構わないと言及しています。
溶連菌感染症の予防
現在のところ溶連菌感染症に対するワクチンはないため、予防接種による感染の予防はできません。
基本的には、風邪と同じように手洗いうがいやマスクなどで予防しましょう。
免疫力が下がっていると溶連菌感染症にかかりやすいため、規則正しい生活やバランスのよい食事、十分な睡眠などを心がけることも大切です。
また、兄弟や家族に感染者が出た場合には、食器やタオルは共用せず、できるだけ濃厚接触は避けるようにしましょう。
ただ予防を徹底していても、溶連菌感染症は感染力が強いためかかってしまうこともあります。
溶連菌感染症を疑うような症状があれば、できるだけ早くかかりつけの医療機関を受診するようにしましょう。
教えて院長先生!よくある質問Q&A
溶連菌感染症についてよくある質問を院長先生にお答えいただきます。
溶連菌感染症は、大人もかかるといわれていますが子どもと症状の違いはありますか?
実感としては大人の方が軽いかなとは思います。ただ、なぜ大人の方が症状が軽いのかはわかっていません。
溶連菌感染症は自然治癒でも治る病気ですか?
自然治癒でも治る場合がありますが、さまざまな合併症のリスクを考えると、きちんと抗生剤を内服すべきと考えます。
また、一部には劇症型というのもあるので、そういう意味でも抗生剤を使用すべきと思います。
まとめ
溶連菌感染症は、おもに発熱やのどの痛み、身体や手足の発疹などの症状を中心とする、子どものかかりやすい感染症のひとつです。
放っておいたり、治療が不十分だったりすると、重症化や合併症のおそれがあります。
溶連菌感染症に当てはまる症状がみられたら、すみやかに医療機関を受診しましょう。
まとめ
- 溶連菌感染症は子どもが感染しやすく発熱とのどの痛みが主な症状
- 溶連菌感染症は放っておくと重症化や合併症の恐れがある
- 溶連菌感染症で処方された抗生剤は最後まで飲み切る
受診後は安静を心がけ、処方された抗生剤を決められた日数分きちんと服用することが大切です。
できるだけ感染を防ぐために、日頃から手洗いうがいなどを心がけ、規則正しい生活を送りましょう。
あだち耳鼻咽喉科でも溶連菌感染症の検査や治療ができます。名島周辺にお住まいで、気になる方はぜひ当院へお越しください。
≪この記事は本院のあだち耳鼻咽喉科より引用したものです≫
出典:https://adachi-ent.or.jp/column/990/
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